明王のリーダー 不動明王
不動明王とは
「お不動さん」と呼ばれ親しまれている明王です。正式名は不動明王【ふどうみょうおう】といいます。明王の中では抜群の知名度でしょう。 「〜不動」と呼ばれるお寺に心当たりはないでしょうか?東京で言うと、「高幡不動」や「目黒不動」「目白不動」等がありますが、これらは全て不動明王を本尊【ほんぞん】としています。目黒不動と目白不動は、そのまま「目黒」「目白」という地名になりました。どちらも「江戸五色不動」というお寺群に属します。五色不動というだけあり、目黒・目白以外にも、「目赤不動」「目青不動」「目黄不動」が存在します。その名の通り、5色それぞれの目の色をした不動明王が安置されています。現在もそのまま残っていますので、一度全てを巡ってみるのも面白いかもしれません。
不動明王に限らず、「明王」は元々「密教【みっきょう】」の仏です。現在でも明王が祀られているのは、真言宗や天台宗等の密教系寺院がほとんどです。先ほどの江戸五色不動も、全て真言宗・天台宗のどちらかです。密教で最高の地位にある仏を「大日如来【だいにちにょらい】」といいますが、不動明王は、この大日如来が作り出した分身とも、大日如来が自ら変身した姿とも言われています。未だ仏教に帰依【きえ】しない愚かな民衆(筆者含む)を、力づくで正しい道に連れて行く、迷惑な頼もしい仏様です。
不動明王の特徴
不動明王の特徴は、まずなんと言ってもその表情でしょう。これは明王に共通する特徴でもありますが、力づくで民衆を導くというお役目柄、常に怒っています。この表情を「憤怒の相【ふんぬのそう】」といいます。明王はだいたいみんな憤怒の相ですが、不動明王の憤怒の相はひと味違います。よく見ると、右目は上を、左目は下を向き、口から覗く牙も、目と同じ方向に左右で互い違いになっています。
これを「天地眼【てんちがん】」といい、上から下まで全てを見渡している事を示します。しかし、この特徴は平安時代中期以降のもので、それまではまっすぐ前を見据えており(平常眼【へいじょうがん】)、髪の毛もストレート※のおさげでした。京都・東寺の不動明王がこの形式です。一概には言えませんが、この特徴である程度の時代区分もできるでしょう。また、この平常眼・天地眼を使い分けられる人物として、不動明王の他にDえもんのN氏が挙げられます。
コメント欄にnanameさんよりご指摘いただきました。ありがとうございました。
持物【じもつ】にも特徴があります。ほとんどの場合、右手に剣、左手に羂索【けんじゃく】を持ちます。先に、力づくで教えを授けると書きましたが、右手の剣は愚かな民衆を張り倒すためのものではありません。煩悩を切り離すためのものです。「倶利伽藍剣【くりからけん】」とも呼ばれます。羂索は、五色の紐で編まれた縄です。魔物を縛り上げたり、苦しむ民衆を救い上げたりする万能のアイテムです。見慣れない漢字ですが、密教系の仏像ではよく出てくるキーワードですので、覚えておきましょう。
「不動明王の特徴」で述べた部分ですぐ見分けられると思います。明王部の仏像は、多面多臂【ためんたひ】のものが多いのですが、不動明王に関しては、そのほとんどが一面二臂【いちめんにひ】像です。「多面多臂」というのは、顔と腕が多い事をいい、「面」は顔(頭)の数、「臂」は腕の本数を指します。一面二臂と言えば、顔がひとつで腕が2本という意味になります。普通ですね。「八面六臂の大活躍」という言い回しはここからきています。この「〜面〜臂」という言葉も今後よく出てくるので、ぜひ覚えておいてください。
他の特徴として、子連れの三尊像が多く作られています。2人の子供は、それぞれ「矜羯羅童子【こんがらどうじ】」と「制多迦童子【せいたかどうじ】」と呼ばれます。白い肌で賢そうなのが矜羯羅童子、赤い肌で活発そうなのが制多迦童子です。通常は、向かって右側に矜羯羅童子、左側に制多迦童子が配されます。
10代の少年の様な姿で表現される事が多いこの2人は、不動明王の息子ではなく、不動明王の従者です。不動明王の従者には8人の童子(八大童子)がいますが、仏像として造形されるのは、ほとんどの場合この2体です。
多くの子供達を従えるスーパースター。言うなれば、不動明王は仏像界のマイケル・ジャクソンです。変な意味でなく。
不動明王スペック
| 名称 | 不動明王【ふどうみょうおう】 |
|---|---|
| サンスクリット名 | アチャラ アチャラナータ |
| 所属ユニット | 五大明王 不動三尊 阿弥陀三尊 |
| 中尊・脇侍 | 「矜羯羅童子【こんがらどうじ】・制多迦童子【せいたかどうじ】」「愛染明王・大日如来」八大童子【はちだいどうじ】 |
| 変身・分身 | 大日如来 |
| お住まい | 東寺講堂 東大寺法華堂 新薬師寺 唐招提寺 園城院 青蓮院 高野山明王院 成田山新勝寺 高幡不動 etc. |
| 印・持物 | 羂索・剣(倶利伽藍剣【くりからけん】) |
| 真言 | ノウマク・サンマンダ・バザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン |
不動明王に会いに行こう
著名な不動明王の仏像が安置されているお寺の一覧です。公開スケジュールは変更される場合がありますので、事前に各お寺に確認されることをおすすめします。
| 寺社名 | 通称(安置) | 指定 | 住所 | 電話 | ご開帳予定日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東北地方 | |||||
| 瑞厳寺 | 重 | 宮城県宮城郡松島町字町内91 | - | 33年毎(2039年) | |
| 関東地方 | |||||
| 瀧泉寺 | 目黒不動 | - | 東京都目黒区下目黒3-20-26 | 03-5722-9480 | 常設 |
| 金剛寺 | 高幡不動 | 重 | 東京都日野市高幡733 | 042-591-0032 | 常設 |
| 新勝寺 | 成田山 | 重 | 千葉県成田市成田1 | 0476-22-2111 | 未定 |
| 結縁寺 | 重 | 千葉県印西市結縁寺516 | 0476-22-2111 | 9/28 | |
| 中部地方 | |||||
| 大聖院 | 重 | 三重県四日市市日永2-11-7 | 0593-45-1666 | 1/8,8/28 | |
| 常福寺 | 重 | 三重県伊賀市古郡559 | 0595-38-1016 | 1/1~3,4/3,8/18 | |
| 近畿地方 | |||||
| 東大寺 | (法華堂) | 重 | 奈良市雑司町406-1 | 0742-22-5511 | 常設 |
| 新薬師寺 | (奈良博) | 重 | 奈良市高畑町1352 | 0742-22-3736 | 不定期 |
| 唐招提寺 | 重 | 奈良市五条町13-46 | 0742-33-7900 | - | |
| 長谷寺 | (新宝物館) | 重 | 奈良県桜井市初瀬731-1 | 0745-93-2003 | 春期4/1~5/31 秋期10/1~12/31 |
| 教王 護国寺 |
東寺 | 重 | 京都市南区九条町1 | 075-691-3325 | 常設 |
| 青蓮院 | (奈良博) | 国 | 京都市東山区粟田口三条坊町69-1 | 075-861-0343 | 不定期 |
| 観心寺 | 重 | 大阪府河内長野市寺元475 | 0745-93-2003 | - | |
| 高野山 明王院 |
重 | 和歌山県伊都郡高野町高野山146 | 0736-56-2106 | - | |
| 高野山 金剛峯寺 |
重 | 和歌山県伊都郡高野町高野山132 | 0736-56-2011 | - | |










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