2008年12月22日 月曜日  著者:

インドの破壊神が夫婦そろってひれ伏した 降三世明王

降三世明王とは

降三世明王不動明王【ふどうみょうおう】」をリーダーに据えたイケメン明王ユニット「五大明王【ごだいみょうおう】に所属し、8本の腕で東方の守りを固めるのが、今回紹介させていただく「降三世明王【ごうざんぜみょうおう】」です。

「降三世」とは、「三世の王に勝利した」という意味で、ここでいう「三世の王」というのはヒンドゥー教の破壊神「シヴァ」を指します。つまり、シヴァ神に勝った明王ですよ、という意味ですね。

ヒンドゥー教では「現在・過去・未来」を支配する「三世の王シヴァ」ですが、仏教ではあわれにも降三世明王に足蹴にされちゃっています。ついでにシヴァの奥さんである「パールヴァティー」までも足蹴です。仏教ではそれぞれ、シヴァ神は「大自在天【だいじざいてん】」、パールヴァティーは「烏摩【うま】」と呼ばれます。

降三世明王の特徴

大自在天夫妻特徴は、やはりなんと言っても他教の神様夫婦足蹴にしているところでしょう。一神教でそんな事したらエラい事になりそうですが、そこは多神教のおおらかさ、ヒンドゥー教徒から特に怒られるでもなく、信仰を集めているようです。

姿は、そのほとんどが四面(あるいは三面)の八臂像です。この形はヒンドゥー教の魔族「阿修羅【あしゅら】」にそっくりですが、一説によると、この姿にもインド神話に由来があるようです。ちょっと面白いので紹介いたしましょう。ちなみに、勘違いしやすいところですが、「阿修羅」というのは個人名ではありません。悪魔超人の事でもありません。部族の名前です。そこをふまえた上で、インド神話をどうぞ。(ちょっと長いよ)

【インド神話よりカーリー誕生譚】click

やらかしちゃた梵天(ブラフマン)世界征服を企む悪の秘密結社「阿修羅」の首領である「マヒシャ(怪人水牛男)」は、苦行の末「梵天【ぼんてん】(ブラフマン)」から力を与えられます。「女性以外には絶対に殺されない」という力です。こうなるともうほとんど無敵です。早速阿修羅軍団をひきつれて天界へと攻め込みます。神々の王である「帝釈天【たいしゃくてん】(インドラ)」をサクっと倒して世界征服を成し遂げちゃいます
三大神であるところの、「シヴァ」「ヴィシュヌ」「ブラフマン(この騒動の張本人)」も男神ですので、全く手が出せないんですね。

やられちゃった帝釈天(インドラ)そこで登場するのが「シヴァ」の奥さん「ウマ(パールヴァティー)」です。彼女に神々の力が集まります。オラに元気を分けてくれ、と。するとどうでしょう、ピッカーと辺りが光り、その光の中から「戦闘の神ドゥルガー」が誕生します。これがまた、カワイイ顔して強いのなんの。阿修羅軍団を、ニコニコしながらちぎっては投げちぎっては投げ、あっという間に全滅させます。マヒシャも、ライオンに化けたり象に化けたり水牛に化けたりと、果敢にドゥルガーに立ち向かいますが、全く歯が立たず、変身途中の半分水牛というみっともない姿のまま、ついに息絶えます。

阿修羅王であるマヒシャ亡き後、頭角を現したのが「シュンバ」と「ニシュンバ」という阿修羅の兄弟です。彼らは阿修羅軍団を再びひとつにまとめあげ、一大勢力を築きます。
また攻め込まれたら事だと、神々は再びドゥルガーを差し向けます。阿修羅退治に向かったドゥルガーの前に、阿修羅の先兵「ムンダ」と「チャンダ」が立ちはだかります。ここでドゥルガー、何が気に入らなかったのか、突然ブチ切れます。カワイイニコニコ笑顔はどこえやら、顔を真っ黒にして怒り狂い、恐ろしい姿へと変化します。

暴走モード中のカーリー全身真っ黒、首には生首を数珠つなぎにしたネックレス、無数の切断された手でできたスカート、10本の手には各種武器をフル装備、10本の足には蛇が巻き付き、10面の顔には真っ赤で長い舌がぶら下がっています。「殺戮の女神カーリー」の誕生です。夜には絶対会いたくないタイプの女性ですね。いや、昼間でもごめんです。

カーリーは雄叫びを挙げると、ムンダとチャンダに向かって猛突進。スポポンと首を切り落として2人いっぺんに瞬殺です。一瞬の出来事に、ひるむシュンバ、たじろぐニシュンバ。が、彼らにはまだ奥の手があります。魔人ラクタビージャです。「強さのインフレスパイラル」は少年ジャンプが元祖ではないんですね。インド神話の時代からあったのです。

魔人ラクタビージャを放つシュンバとニシュンバ、迎え撃つカーリー。期待された奥の手でしたが、これまたサクっとカーリーに首を刈られます。さぁあとは大将だ、と思いきや、ラクタビージャの血の一滴から、またラクタビージャが生えてきます。切って切って生えて生えて、生えて生えて切って切って。血しぶきをあげればあげる程増えていくラクタビージャ。これはたまりません。それならばと、カーリーはラクタビージャの血を一滴残らず飲んでしまう事にしました。食って食って飲んで飲んで、ついにラクタビージャは息絶えます。

奥の手を失ったシュンバとニシュンバ。カーリーになすすべもなく刈り取られます。

阿修羅軍団を退治したカーリーですが、魔物の血を飲み過ぎて酔っぱらいます。超ハイテンション。刈り取った生首を振り回しながら踊るわ踊る。カーリーが10本の足でステップを踏むと、大地が割れ空が裂け、どっちが魔物だか分からない状況になります。
このままでは世界が滅んでしまう、と、夫であるシヴァが駆けつけ、彼女の足下に寝っころがって、自らクッションとなったのでした。

明王に踏まれたり奥さんに踏まれたり、このシヴァという神様は踏まれフェチなのでしょうか。

と言う訳で、阿修羅の皆さんが、シヴァの奥さん「烏摩(パールヴァティー)」にコテンパンにやられちゃった事がお分かりになったかと思います。そこで降三世明王は、その時の殺戮を反省させるために、かつて刈りまくった阿修羅の様な姿になって現れた。と。死ぬ程前置きが長くなってしまいましたが、この姿にはそういう由来もありますよ、というお話でした。

しかしそうなると、奥さんはともかく、シヴァはとばっちりで踏まれてるのか。とか、元々悪いのは阿修羅なのでは?とか考えちゃいますが、単純に殺生は良くないということでしょうか。素人の私にはよく分かりません。

また、クッションになるためにシヴァがカーリーの足下に自分から潜り込んで寝転がった。というくだりを見ると、案外降三世明王にもわざと踏まれているんじゃなかろうかと、思わず訝しく感じてしまいます。
ちなみに、この踏まれているシヴァ神、実は後の大黒天です。福々しい大黒さんも、仏教に宗旨替えする前はこんなにつらい下積み時代を過ごしていたのですね。

降三世明王の見分け方

単尊で安置されることはめずらしく、だいたい五大明王のセットの中にいます。他の明王との見分け方は、やはり足下のシヴァ・ウマ夫妻ですね。簡単に見分けられると思います。

前章ではシヴァとウマの話ばかりになってしまいましたので、ここでもう少し降三世明王についてみてみましょう。

ここまでお話した通り、この仏は異教の神であるシヴァを屈服させる(改宗させる)ために出現したのですが、では誰が出現させたのでしょうか?
それには諸説あり、密教の最高仏である大日如来の差し金であるとか、大日如来が自ら変身して出撃した姿であるとか、金剛薩埵【こんごうさった】が阿修羅に変身したものだとか、不動明王と同一人物であるとか、イマイチはっきりしません。

また、密教の曼荼羅を見てみると、明王の長である不動明王を差し置いて、なぜかこの降三世明王だけが主要な位置に配置されています。ちょっぴりミステリアスですね。

降三世明王スペック

名称 降三世明王【ごうざんぜみょうおう】
サンスクリット名 トライローキャ・ヴィジャヤ
所属ユニット 五大明王
中尊・脇侍 不動明王・大威徳明王【だいいとくみょうおう】(西)・軍荼利明王【ぐんだりみょうおう】(南)・金剛夜叉明王【こんごうやしゃみょうおう】(真言宗)(北)or 烏枢沙摩明王【うすさまみょうおう】(天台宗)(北)」
変身・分身 金剛薩埵 大日如来 毘盧舎那如来
お住まい 東寺 不退寺 大覚寺 醍醐寺 etc.
印・持物 降三世印・剣 弓矢 金剛杵【こんごうしょ】 羂索【けんじゃく】 三叉戟【さんさげき】 etc.
真言 オン・ソンバ・ ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ

降三世明王に会いに行こう

著名な五大明王(降三世明王含む)の仏像が安置されているお寺の一覧です。公開スケジュールは変更される場合がありますので、事前に各お寺に確認されることをおすすめします。

寺社名 通称(安置) 指定 住所 電話 ご開帳予定日
関西地方
不退寺   奈良市法蓮町517 0742-22-5278  
教王
護国寺
東寺 京都市南区九条町1 075-691-3325 常設
大覚寺   京都市右京区嵯峨大沢町4 075-871-0071  
醍醐寺   京都市伏見区醍醐東大路町22 075-571-0002‎  

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愛染明王

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