ご利益のインフレ 千手観音
千手観音とは
「聖観音」が、一皮むけて「十一面観音」へと変身し、そこからさらに衆生のためにパワーアップしたのが、今回ご紹介する「千手観音【せんじゅかんのん】」です。サイヤ人でいうところの、スーパーサイヤ人2ですね。
聖観音から十一面観音に変身し、顔が増えて四方八方見渡せるようになったはいいものの、今度は手が足りません。困っている人を大量に見つけても、手が2本しかないのでは見てるだけです。いかんともしがたいのです。そこで観音様は手を増やす事にした訳です。ストレートで分かりやすく、好感が持てますね。
が、実際は、「千」という数字は無限を表していて、「手」は手段の事を指しています。無限の手段で衆生を救いますよ、という姿なんですね。従って、手にはそれぞれアイテムを持っています。このアイテムが、衆生を救うための手段を象徴しているのですが、筆者の様に徳が低いものには、いったいどんな手段の事を指しているのかさっぱり分からない様なアイテムも散見されます。
例えば…
- 宝戟【ほうげき】…左手に持った、先が三つに分かれた槍の様な武器です。困っている衆生をこれで小突いて助けるのでしょうか。
- 鉞斧【えっぷ】…斧です。やっぱりこれで小突かれるんでしょうか。頭割れちゃいます。
- 三鈷剣【さんこけん】…柄【つか】が鋭い角のように3つに分かれている刀です。やっぱりこれでもってこづk(略)
- 髑髏杖【どくろじょう】…さきっちょにドクロのついた杖です。これで小突かれるのが一番イヤです。
- 払子【ほっす】…棒の先に馬のしっぽのようなフサフサのついた法具です。しかしこれ、元々はインド人がハエを追い払うために使っていたものです。わざわざハエを追い払いにきてくれるとも思えませんが、どう使うのでしょうか。
- 蒲桃【ぶどう】…フルーツです。もう少し腹の足しになるものの方が…。
ついつい殴られる側の立場で考えてしまいましたが、よくよく考えてみたら、悪いものを退治するためですよ。小さい頃から怒られ続けて成長すると、こういう視点の大人になるんですね。お父さん、お母さん、気をつけましょう。
にしても、打撃系のアイテムが多いですね。
千手観音の特徴
千手観音は十一面観音から変身した仏ですので、頭は11コのままです。が、まれに27コの頭を持つ千手観音もいます。どちらにせよ大幅なパワーアップです。
名前の通り手が千本ある仏ですが、仏像に関していえば千本揃っている作例はかなり稀です。多くの作例では42本に省略されています。これは胸の前で合掌している手をまず2本と数え、他の40本をそれぞれ25本の腕を代表した1本である、と捉えるためです。
この考え方は、僧侶ではなく、仏師【ぶっし】(仏像を彫る職人)が考えだした様な気がします。若干横着ではありますが、むかしはそれこそ全てハンドメイドな訳ですから、手ばっかり千本も作ってられません。コピーペーストするだけで増やせる環境にある筆者でさえ、16本であきらめたのですから(少なすぎ)。私が当時の仏師であったなら、太い手を2本くっつけて、それぞれ500本の代表だ。と言い張ります。間違いなく。
意外と知られていませんが、千本なのは手だけではありません。千手観音は、別名を千手千眼観自在観音【せんじゅせんげんかんじざいかんのん】或いは千手千眼観世音菩薩【せんじゅせんげんかんぜおんぼさつ】といい、その名の通り、千コの目も持っています。パっと見そんな気持ちの悪い姿には見えませんが、一度千手観音の仏像を観察してみてください。千本ある手の掌に、ひとつずつ目がついてます。ヒー。
千手観音の見分け方
この仏はもう一目瞭然でしょう。個性爆発で他に間違え様がありません。敢えて挙げれば、不空羂索観音【ふくうけんじゃくかんのん】を千手観音と見間違える事があるかもしれませんが、不空羂索観音は八臂か六臂です。42本も手はありません。また、不空羂索観音の額には、白毫【びゃくごう】(丸いぽっちり)はついておらず、代わりに第3の目がついており、頭はひとつなのも大きな相違点です。
先ほど、手は42本に省略されると書きましたが、中には本当に千本の手を持つ千手観音の仏像もあります。奈良の唐招提寺や、大阪の葛井寺等がその代表格です。まっすぐというかバカ正直というか、とにかく頑固な仏師の気迫が伝わってきます。一見の価値あり!!
千手観音スペック
| 名称 | 千手観音【せんじゅかんのん】 千手千眼観自在観音【せんじゅせんげんかんじざいかんのん】 千手千眼観世音菩薩【せんじゅせんげんかんぜおんぼさつ】 蓮華王【れんげおう】 |
|---|---|
| サンスクリット名 | サハラス・ブジャ |
| 所属ユニット | 六観音 七観音 八大観音 中国障害者芸術団 |
| 眷属 | 二十八部衆・風神・雷神 |
| 変身・分身 | 聖観音 十一面観音 etc. |
| お住まい | 三十三間堂 広隆寺 法性寺 葛井寺 唐招提寺 興福寺 道成寺 etc. |
| 印・持物 | 宝戟 錫杖 数珠 水瓶 紅蓮 他多数 |
| 真言 | オン・バザラ・タラマ・キリク・ソワカ |
千手観音に会いに行こう
著名な千手観音の仏像が安置されているお寺の一覧です。公開スケジュールは変更される場合がありますので、事前に各お寺に確認されることをおすすめします。
| 寺社名 | 通称(安置) | 指定 | 住所 | 電話 | ご開帳予定日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東北地方 | |||||
| 恵隆寺 | 立木観音堂 | 重 | 福島県河沼郡会津坂下町塔寺字松原2944 | 0242-83-3171 | |
| 関東地方 | |||||
| 龍峰寺 | 重 | 神奈川県海老名市国分北2-13-40 | 046-231-5074 | 1/1,3/17 | |
| 東海地方 | |||||
| 智満寺 | 重 | 静岡県島田市千葉254 | 0547-35-6819 | 60年毎(2054年予定) | |
| 法住寺 | 重 | 愛知県宝飯郡御津町大字赤根字百々61 | 0533-75-3543 | 毎月17日 | |
| 林光寺 | 重 | 三重県鈴鹿市神戸6-7-11 | 059-382-0610 | 8/9深夜 | |
| 大江寺 | 重 | 三重県伊勢市二見町江1659 | 0596-43-2283 | 1/18,5/5,8/18 (毎月18日小開帳) |
|
| 近畿地方 | |||||
| 明王院 | 重 | 滋賀県大津市葛川坊村町115 | 077-599-2372 | 8/28 | |
| 檜尾寺 | 檜尾神社 | 重 | 滋賀県甲賀市甲南町池田43 | 0748-86-5878 | 1/1〜1/3,8/18 |
| 観音正寺 | 重 | 滋賀県蒲生郡安土町大字石寺2 | 0748-46-2549 | 33年毎(2012年予定) | |
| 唐招提寺 | (金堂) | 国 | 奈良市五条町13-46 | 0742-33-7900 | |
| 興福寺 | (国宝館) | 重 | 奈良市登大路町48 | 0742-22-7755 | 常設 |
| 清水寺 | 重 | 京都府京都市東山区清水1-294 | 075-551-1234 | 33年毎(2033年予定) | |
| 蓮華王院 | 三十三間堂 | 国 | 京都府京都市東山区三十三間堂廻り657 | 075-561-0467 | |
| 教王 護国寺 |
東寺 | 重 | 京都市南区九条町1 | 075-691-3325 | |
| 広隆寺 | 国 | 京都市右京区太秦峰岡町32 | 075-861-1461 | ||
| 法性寺 | 国 | 京都市東山区本町16 | 075-541-8767 | 要予約 | |
| 峰定寺 | 重 | 京都府京都市左京区花脊原地町396 | 075-746-0036 | 4月〜11月(雨天・団体・子供不可) | |
| 葛井寺 | 国 | 大阪府藤井寺市藤井寺1-16-21 | 072-938-0005 | 毎月17日 | |
| 施福寺 | 重 | 大阪府和泉市槇尾山町136 | 0725-92-2332 | 5/15 | |
| 道成寺 | 国 | 和歌山県日高郡日高川町鐘巻1738 | 0738-22-0543 | 常設 | |
| 補陀落 山寺 |
重 | 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字浜の宮348 | 0735-52-2523 | 1/27,5/17,7/10 | |
| 中国地方 | |||||
| 三尾寺 | 重 | 岡山県新見市豊永赤馬4676 | 0867-74-2773 | 大法要時(不定期) | |
| 三恵寺 | 県 | 山口県下関市豊浦町大字川棚5000 | 0837-74-2433 | 70年毎(2077年予定) | |
| 九州地方 | |||||
| 大悲王院 | 重 | 福岡県前原市雷山626 | 092-323-3547 | ||










千手観音のこと良く分かりましたありがとうございます。
持物でどの手に青い睡蓮を持っているのかを知りたいのです。
青色の蓮はありませんし、温帯性の睡蓮にも青色はなく、熱帯性睡蓮だけに青色があるのです。
青い睡蓮はナイル川にある原種で、古代エジプトでは、太陽の神の化身で知られています。
千手観音様ぶつがどのようにして青い睡蓮を手に入れたのかその歴史的な変遷を知りたいのです。
モネも熱帯性睡蓮の青色に魅せられ死ぬまで栽培したのですが失敗なのです。
どうぞよろしきお願いいたします。
観音と睡蓮に魅せられてます。
Comment by 前原 潔 — 2009年4月13日 @ 14:28
>前原 潔様
私も専門家ではなく、ただの「仏像ファン」ですので、確かな事は申し上げられませんが、千手観音が持つ「青蓮華」は一説には白い蓮の花だとも言われているようです。実際「青蓮華」という名の中国原産の白い花があります。
「デジタル写真貯蔵庫」 http://ezaki601.exblog.jp/i23/
千手観音の青蓮華がこの花の事を指すのかどうかは分かりませんが。この花の事ではなく、ナイル原産の青い睡蓮だとするのもロマンがあっていいですね。
右手に「青蓮華」、左手に「紅蓮華」及び「白蓮華」を持つ作例が多く見られますが、どの右手に持つかまでは決まっていないようです。千手観音の持物の定義は「千手千眼陀羅尼経」に書かれていますが、右手と左手の持物が逆になっている例もありますので、どこに何を持たせるのかは、意外と仏師の解釈や美的感覚で決まっちゃってるのかもしれませんね。
なんともあやふやな結論で申し訳ないです。
Comment by 茶碗蒸し — 2009年4月17日 @ 7:45