2008年11月14日 金曜日  著者: xyz19680105

明王のリーダー 不動明王

不動明王とは

不動明王「お不動さん」と呼ばれ親しまれている明王です。正式名は不動明王【ふどうみょうおう】といいます。明王の中では抜群の知名度でしょう。 「〜不動」と呼ばれるお寺に心当たりはないでしょうか?東京で言うと、「高幡不動」や「目黒不動」「目白不動」等がありますが、これらは全て不動明王を本尊【ほんぞん】としています。目黒不動と目白不動は、そのまま「目黒」「目白」という地名になりました。どちらも「江戸五色不動」というお寺群に属します。五色不動というだけあり、目黒・目白以外にも、「目赤不動」「目青不動」「目黄不動」が存在します。その名の通り、5色それぞれの目の色をした不動明王が安置されています。現在もそのまま残っていますので、一度全てを巡ってみるのも面白いかもしれません。

不動明王に限らず、「明王」は元々「密教【みっきょう】」の仏です。現在でも明王が祀られているのは、真言宗や天台宗等の密教系寺院がほとんどです。先ほどの江戸五色不動も、全て真言宗・天台宗のどちらかです。密教で最高の地位にある仏を「大日如来【だいにちにょらい】」といいますが、不動明王は、この大日如来が作り出した分身とも、大日如来が自ら変身した姿とも言われています。未だ仏教に帰依【きえ】しない愚かな民衆(筆者含む)を、力づくで正しい道に連れて行く、迷惑な頼もしい仏様です。

不動明王の特徴

天地眼不動明王の特徴は、まずなんと言ってもその表情でしょう。これは明王に共通する特徴でもありますが、力づくで民衆を導くというお役目柄、常に怒っています。この表情を「憤怒の相【ふんぬのそう】」といいます。明王はだいたいみんな憤怒の相ですが、不動明王の憤怒の相はひと味違います。よく見ると、右目は上を、左目は下を向き、口から覗く牙も、目と同じ方向に左右で互い違いになっています。

天地眼を実践中のN氏これを「天地眼【てんちがん】」といい、上から下まで全てを見渡している事を示します。しかし、この特徴は平安時代中期以降のもので、それまではまっすぐ前を見据えており(平常眼【へいじょうがん】)、髪の毛もストレートのおさげでした。京都・東寺の不動明王がこの形式です。一概には言えませんが、この特徴である程度の時代区分もできるでしょう。また、この平常眼・天地眼を使い分けられる人物として、不動明王の他にDえもんのN氏が挙げられます。

【’09.06.06訂正】click

おさげ(弁髪)は、新型のクルクルカールな髪型の場合でも基本的についてるそうです。
コメント欄にnanameさんよりご指摘いただきました。ありがとうございました。

持物【じもつ】にも特徴があります。ほとんどの場合、右手に剣、左手に羂索【けんじゃく】を持ちます。先に、力づくで教えを授けると書きましたが、右手の剣は愚かな民衆を張り倒すためのものではありません。煩悩を切り離すためのものです。「倶利伽藍剣【くりからけん】」とも呼ばれます。羂索は、五色の紐で編まれた縄です。魔物を縛り上げたり、苦しむ民衆を救い上げたりする万能のアイテムです。見慣れない漢字ですが、密教系の仏像ではよく出てくるキーワードですので、覚えておきましょう。
「不動明王の特徴」で述べた部分ですぐ見分けられると思います。明王部の仏像は、多面多臂【ためんたひ】のものが多いのですが、不動明王に関しては、そのほとんどが一面二臂【いちめんにひ】像です。「多面多臂」というのは、顔と腕が多い事をいい、「面」は顔(頭)の数、「臂」は腕の本数を指します。一面二臂と言えば、顔がひとつで腕が2本という意味になります。普通ですね。「八面六臂の大活躍」という言い回しはここからきています。この「〜面〜臂」という言葉も今後よく出てくるので、ぜひ覚えておいてください。

他の特徴として、子連れの三尊像が多く作られています。2人の子供は、それぞれ「矜羯羅童子【こんがらどうじ】」と「制多迦童子【せいたかどうじ】」と呼ばれます。白い肌で賢そうなのが矜羯羅童子、赤い肌で活発そうなのが制多迦童子です。通常は、向かって右側に矜羯羅童子、左側に制多迦童子が配されます。
10代の少年の様な姿で表現される事が多いこの2人は、不動明王の息子ではなく、不動明王の従者です。不動明王の従者には8人の童子(八大童子)がいますが、仏像として造形されるのは、ほとんどの場合この2体です。
多くの子供達を従えるスーパースター。言うなれば、不動明王は仏像界のマイケル・ジャクソンです。変な意味でなく。

不動明王スペック

名称 不動明王【ふどうみょうおう】
サンスクリット名 アチャラ アチャラナータ
所属ユニット 五大明王 不動三尊 阿弥陀三尊
中尊・脇侍 「矜羯羅童子【こんがらどうじ】・制多迦童子【せいたかどうじ】」「愛染明王・大日如来」八大童子【はちだいどうじ】
変身・分身 大日如来
お住まい 東寺講堂 東大寺法華堂 新薬師寺 唐招提寺 園城院 青蓮院 高野山明王院 成田山新勝寺 高幡不動 etc.
印・持物 羂索・剣(倶利伽藍剣【くりからけん】)
真言 ノウマク・サンマンダ・バザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン

不動明王に会いに行こう

著名な不動明王の仏像が安置されているお寺の一覧です。公開スケジュールは変更される場合がありますので、事前に各お寺に確認されることをおすすめします。

寺社名 通称(安置) 指定 住所 電話 ご開帳予定日
東北地方
瑞厳寺   宮城県宮城郡松島町字町内91 - 33年毎(2039年)
関東地方
瀧泉寺 目黒不動 - 東京都目黒区下目黒3-20-26 03-5722-9480 常設
金剛寺 高幡不動 東京都日野市高幡733 042-591-0032 常設
新勝寺 成田山 千葉県成田市成田1 0476-22-2111 未定
結縁寺   千葉県印西市結縁寺516 0476-22-2111 9/28
中部地方
大聖院   三重県四日市市日永2-11-7 0593-45-1666 1/8,8/28
常福寺   三重県伊賀市古郡559 0595-38-1016 1/1~3,4/3,8/18
近畿地方
東大寺 (法華堂) 奈良市雑司町406-1 0742-22-5511 常設
新薬師寺 奈良博 奈良市高畑町1352 0742-22-3736 不定期
唐招提寺   奈良市五条町13-46 0742-33-7900 -
長谷寺 (新宝物館) 奈良県桜井市初瀬731-1 0745-93-2003 春期4/1~5/31
秋期10/1~12/31
教王
護国寺
東寺 京都市南区九条町1 075-691-3325 常設
青蓮院 奈良博 京都市東山区粟田口三条坊町69-1 075-861-0343 不定期
観心寺   大阪府河内長野市寺元475 0745-93-2003 -
高野山
明王院
  和歌山県伊都郡高野町高野山146 0736-56-2106 -
高野山
金剛峯寺
  和歌山県伊都郡高野町高野山132 0736-56-2011 -

…国宝 …重要文化財  県・市…各自治体指定文化財
愛染明王

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4件のコメント

  1.  仏事の説教は聞きたくないものは去れと言われるのだけれど、説座を破ろうとするものとか、障りをなすものがいないわけではないらしい。
    そんなときには明王部が出張ってくる。ただ何に対しても発動するかというとそうでもないらしく、追っ払えばそれでよいようなやり方らしい。
    いまの警察とはえらい違いだ。      乱筆乱文失礼。

    コメント by シャクソン・ファイブ — 2008年11月19日 @ 2:08

  2. たくさんのコメントありがとうございます。勉強になります。担当の茶碗蒸しです。
    仏像を愛すればこそのこれらの記事ですが、仏教徒でもなく浅学非才でありますゆえ、明王に追っ払われないよう気をつけてはおりますが、間違った事や失礼な事を書いているかもしれません。お気づきの点があれば、ご指摘ください。できますれば、明王ではなく菩薩のように。

    コメント by 茶碗蒸し — 2008年11月19日 @ 10:04

  3. お不動さんのおさげ(弁髪)のことでちょっと気になってコメントしました。普通の青いお不動さんは、旧型(平常眼)も、新型(天地眼)も、どちらも基本的に(平安時代から現代まで)弁髪です。天地眼のモデルによく使われる醍醐寺の『玄朝様不動御頭』も、首の所までしか描いていないけれど、よく見ると途中まで弁髪が描かれています。
    ちなみに新型の髪型のようなおおきなカールでお下げがないのは、三井寺園城寺の黄不動タイプで、でも、これは両目をくゎっと開けています。まあ、これは黄色いので、すぐ見分けが付きますね。
    このサイトは語り口と絵の表現形態が面白いのだけれど、内容はとても正確だったので、よけい気になって・・・ごめんなさい。

    コメント by naname — 2009年6月1日 @ 10:17

  4. >nanameさん
    なんと、そうでしたか。ストレートとおさげがセットだと思い込んでおりました。ご指摘いただいた箇所を修正しました。いかんせん素人の観察眼ですので、他にもまだまだ間違い・勘違いがあると思います。お気づきの点あらば、遠慮なく指摘していただけるとありがたいです。
    この戒めを忘れない為にも、明日から私もパーマをかけて三つ編みして生きていく事にします。(不動スタイルの自分の姿を脳内シミュレート中…2秒)社会生活に支障をきたしそうなのでやっぱりやめます。

    三井寺の黄不動といえば、今年の2月に六本木でお会いしました。いやぁ、男前でしたねぇ。ミッドタウンに違和感なくとけ込んでおりました。東京のド真ん中で見る仏像もまた、いいもんですね。

    では、おさげの認識を新たに、お不動さん巡りに出かけてみようと思います。ご指摘いただき、ありがとうございました。

    コメント by 茶碗蒸し — 2009年6月6日 @ 11:21

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